→世界初、塩化ナトリウムの六角形2次元シートの作成に成功
→塩化ナトリウムの薄膜はダイヤモンド上に形成され、エレクトロニクスの分野で役立つ
ロシアのスコルコボ化学技術研究所の材料科学者クセニア・ティクホミロバ氏は、世界で初めて六角形の塩を形成することに成功しました。
ダイヤモンド基板の上に塩化ナトリウム(NaCl)の薄膜をつくることで、基盤と膜の相互反応により薄い六角形の結晶構造ができるとのこと。
この新しい構造を利用することにより、高出力の電子機器の安定性を向上できるかもしれません。
■六角形をした2次元物質とは?
2004年、研究により「グラフェン」と呼ばれる2次元炭素の入手が可能になりました。
グラフェンとは1原子の厚さで成り立つシート状の炭素結合です。
通常、ほとんどの物質は原子が幾重にも重なって立体的な構造を取っています。しかし、このグラフェンは厚さが1原子のみであり、いわば極薄の2次元構造なのです。
完全なグラフェンは、六角形セルのみで形成されており、この炭素同士の結合は平面内ではダイヤモンドよりも強力だと考えられています。
グラフェンは驚異的な特性を持ち、世界で最も引っ張りに強く、熱伝導が良いとされています。加えて、電気伝導性も非常に良いので、半導体材料への利用価値が高い材料として注目されてきました。
ちなみに、グラフェンはセロハンテープの上に黒鉛(グラファイト)のかけらを張り付けて剥がす過程を繰り返すことで入手できます。
簡単かつ単純な作業ですが、グラファイトを少しずつ剥がしてどんどん薄くするとグラフェンになるのです。
■塩化ナトリウムの六角形2次元物質
さて、「炭素」の2次元物質が存在するなら、その他の分子でできた2次元物質も存在するのではないでしょうか?そしてそれはグラフェンと同じように高機能かもしれません。
この点に注目したティクホミロバ氏は、様々な物質で2次元構造ができるかどうか研究を行ない、塩化ナトリウム(以下、NaCl)について調査している時に、ある1つの仮説にたどり着きました。
その仮説とは、「ダイヤモンドの表面上にはNaCl薄膜が存在する」というものです。
既存のNaClは通常、立方体からなる立体構造で成り立っています。
ですから、彼の仮説によると、ダイヤモンドの表面には構造の大きく異なったNaClが存在することになります。
さて、彼がこの理論を証明するために実験を行ったところ、実際にダイヤモンドと薄膜のNaClが強く相互作用し、異なる構造(六角形)のNaClが合成されました。
このNaCl薄膜の厚さの平均は約6ナノメートルであり、これ以上厚くなると六角形ではなくなり、立方体へと戻ってしまうとのこと。
そして、作成されたNaCl薄膜は、ダイヤモンド基板との強力な結合と幅広い電子禁制帯を持つため、半導体である「ダイヤモンド電界効果トランジスタ(信号増幅・切り替え装置)」として電気自動車や通信機器に応用できます。
電界効果トランジスタは現在ホウ素に頼っていますが、NaCl薄膜を利用するなら、さらに安定性を向上できるのです。
また、今回の塩化ナトリウムの2次元物質の発見は、他の種類の2次元物質形成の予測に役立つかもしれません。
今後、更なる2次元材料が発見され、エレクトロニクスやその他の分野の飛躍へと繋がる可能性があるでしょう。
この研究は4月24日、「Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載されました。
Exotic Two-Dimensional Structure:The First Case of Hexagonal NaCl
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jpclett.0c00874
それな
銀河塩と名付けるのだ^_^
均一な純度の高い物質が作れるとか? 量産装置として使えるば面白いよね。