生後まもない長男に対する傷害容疑で実の母が逮捕された――。だが、いわゆる虐待事件とは少々事情が異なる。警察は、母親がわが子に“血”を飲ませたと疑い、新聞報道では「代理ミュンヒハウゼン症候群」なる言葉も飛び交う。一方、容疑者の夫は突然の逮捕劇に怒りを滲ませていた。
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「妻は自分よりも子どもを大事にしていました。不妊治療までして授かった子どもにそんなことをするはずがありません……」
今月7日に大阪府警が逮捕したのは井田莉歩(23)。その夫(31)は、本誌(「週刊新潮」)の取材に妻の無実を訴え続けた。
この奇妙な事件について府警担当記者が概説する。
「今年1月に大阪市内の病院で生まれた井田の長男は、発熱を理由に、まもなく同じ病院の集中治療室に入院します。その後、3月上旬までの間に20回以上も嘔吐し、そこに血液が混じっていた。病院側は井田が付き添っている時に限って男児が血を吐くことに疑問を抱き、府警に相談。府警は井田が長男に血液を飲ませ、嘔吐させたとして逮捕に踏み切ったのです。DNA鑑定の結果、男児が吐いたのは血縁関係のある人物の血液。母親のものとみられています」
これが事実だとして、なぜ母親がわが子に血を飲ませる必要があるのか。精神科医の片田珠美氏が言う。
「今回の容疑者には、代理ミュンヒハウゼン症候群の疑いがあります。これは親が自分の子どもを病気と偽って周囲の関心や同情を惹こうとする一種の虐待行為。子どもを苦しませたいのではなく、自分の存在を認められたいという願望から行為に及んでしまうのです」
アメリカでは2015年に、代理ミュンヒハウゼン症候群が疑われる母親から障害者のふりを強制され続けた娘が、恋人に母親を殺害させる事件も起きた。
最初の子どもは死去
果たして、この精神疾患が今回の事件の引き金となったのか。だが、夫は真っ向から反論する。
「昨年、結婚しましたが、妻は明るい性格で、とても精神を病んでいるとは思えません。自分のおしゃれには一切お金を遣わないのに、子どものためには3万円分のおもちゃも買って来る。そんな子ども想いの妻が事件を起こすはずがない。息子が入院していた集中治療室には常に看護師さんがいて、お医者さんも数分おきに様子を見に来ます。ベッドの上には監視カメラもついているので、誰にも気づかれずに血を飲ませられるとは考えられません。逮捕の当日は、僕も一緒に任意同行させられました。そこで嘘発見器をつけられて、“妻が血をビンに詰めていなかったか”などと聞かれましたが、そんな姿は見たことがありませんよ」
井田は夫と結婚する前にも同じ病院で女児を出産しているが、小児脳性麻痺を患っており、2歳で命を落としたという。父親が誰かは身内にも明かしていない。
「友人を介して妻と知り合ったとき、長女が本当に可愛かったんです。ただ、長女が亡くなった頃から妻の生理が来なくなったようで、不妊治療を続けてようやく長男を妊娠。それを機に入籍しました。でも、その息子にも自由に会えない状態です」(同)
被害者となった長男の命に別条はなかったものの、現在は児童相談所に“保護”されている。夫妻は息子を取り戻すべく、弁護士を立てて家裁に申し立てを行い、今月中にも判断が下されるところだった。
娘夫婦と同居する井田の母親はこう訴える。
「孫だけでなく娘も連れ去られて本当に悔しい。“吸血鬼一家”なんて陰口も叩かれますが、娘には一緒に頑張ろうと伝えています」
血の涙を流さんばかりの家族に待つ結末とは――。
「週刊新潮」2020年9月24日号 掲載
母かはすぐわかるよね、その判別もできない程度だと本人の血かもしれん
成分がちょっと違うのかね
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